飲食店の人件費は売上の30%が目安!繁盛店がおこなう人件費の管理方法
飲食店の経営をしていると、「人件費の目安って、どのくらいだろう?」と思う時もあるでしょう。
人件費は飲食店の経営の中でも大きなお金の動きになるので、最適な金額にしたいですよね。
ただし、人件費を安易に削ってしまうと、スタッフさんとのトラブルの原因になってしまうので、注意が必要です。
なので、この記事では、以下の内容をお伝えします。
- 人件費を考える上で重要な「FLコスト」
- 安易に人件費を削った場合に起こるトラブル
- スタッフさんとトラブルにならずに人件費を節約する方法
この記事を読めば、お店のスタッフさんとの人間関係を壊すことなく、人件費を節約しながらお店を経営できますよ。
弟子「人件費って、お金の話だからなんだか難しそう」
おかげ丸「でも、人件費は飲食店経営をする上で大切な部分なので、参考にして欲しいまる~」
目次
そもそも人件費とは
そもそも人件費とは、スタッフさんに支払う全てのお金を含めた金額のことです。人件費を表にまとめると、以下のようになります。
人件費の内容 | 詳細 |
---|---|
給料 | 基本給 残業手当 賞与通勤手当 |
福利厚生 | 社会保険(健康保険・介護保険・厚生年金) 労災保険 雇用保険 サークル活動(あれば) 社員旅行など |
退職金 | 退職金 |
スタッフさんを雇う際の雇用形態によって、人件費として支払う金額が変わってきます。
おかげ丸「アルバイトさんの場合は、こんな感じまる」
- 基本給
- 時間外手当
- 深夜手当
- 交通費
おかげ丸「正社員さんの場合なら、例えばこんな感じまる」
- 基本給
- 役職手当
- 残業手当
- 通勤手当
- 住宅手当
- 扶養手当
- 健康保険
- 厚生年金
- 雇用保険
- 組合費など
雇用形態によって、人件費の金額は変わります。
弟子「人件費って、いろいろなお金が含まれていたんだね」
おかげ丸「そうまる!手当を含めて計算しておくことが必要まる」
では、経費として人件費は売上の何%が最適なのでしょうか?そのためには、まず「FLコスト」という用語を覚えておきましょう。
「FLコスト」を覚えておこう
飲食店を経営していて、大事なことは売上と経費をしっかり把握することです。経費をコントロールできるようになれば、利益を多く確保できますよ。
そこで、重要なのが「FLコスト」です。FLコストを身に付ければ、飲食店を安定して経営できますよ。
FLコストとは?
「FLコスト」とは「食材費の原価+人件費」のことです。「Fがfood(食材費の原価)」「LがLabor(人件費)」のことを指しています。
売上から見る経費の内訳は、以下の数値を目安にすると良いと言われています。
内訳 | 売上全体からのパーセント |
---|---|
食材費 | 30% |
人件費・固定費 | 30~45% |
利益 | 5~10% |
弟子「経費の内訳を経営者はきっちり考えた方が良いんだね」
おかげ丸「特にFLコスト(食材費+人件費)はしっかりコントロールすることが大事になってくるまる。売上に対して、FLコストが55~60%以内に収めることが大切まる」
FLコストが重要な理由
FLコストが重要な理由は、以下の通りです。
- 売上に対する「食材の原価率」「人件費率」の現状が分かる
- お店の経営状況を把握できる
FLコストをしっかりと出すと、「売上に対する人件費が少ない」と分かったり、「自分が経営している飲食店は、この経費が多いな」と費用を詳細に把握することができます。
それにより、「改善すべき点」「伸ばしていった方が良い所」などがわかるので、経営がしやすくなります。
弟子「売上や経費の数字を見ながら経営をした方がいいんだね」
おかげ丸「感覚ではなく、数字に基づいた経営ができるようになった方がお店は繁盛しやすいまる」
人件費率の目安は?
人件費率の目安は、売上の20〜30%が目安と言われています。
なので、売上が毎月200万円なら、人件費は40万円〜60万円が目安ですね。
ただし、お店によっては、人件費率が30%以上になることも多いのであくまでも目安として覚えておきましょう。
弟子「人件費率の目安は覚えておいた方が良さそうだね」
おかげ丸「そうだね。人件費率は20~30%が目安と言われているけど、あくまでも目安なので、必ず比率を合わせる必要はないよ」
人時売上高を意識して配置すべき人員数の最適化を図る
人時売上高とは1時間あたり1人の従業員が働くことによって得ることができる売上のことです。計算方法は、総売上高÷従業員労働時間合計(店長・社員含む)で求めることができます。
通常は3〜4000円と言われています。これより少ない場合は、スタッフの配置のしすぎと思われるので、今の単月売上高から割り出して配置すべき人数を決めることも重要です。
月で配置できるスタッフの総時間が割り出せたら、過去の売上データをもとに、混み合う曜日や時間帯に合わせて比重を置いて全体最適化していくとよいでしょう。
人件費を安易に削減した時に起きやすいトラブル
経営者が「解雇」「賃金の引き下げ」で人件費を安易に削減してしまうと、以下のようなトラブルに繋がる恐れがあるので、注意が必要です。
- スタッフさんのモチベーションの低下
- スタッフさんの一人当たりの業務が増える
- スタッフさんの人材育成に時間が取られる
「解雇」「賃金の引き下げ」で、短期的には人件費が削減できるかもしれません。しかし、長期的には、大切なスタッフさんとの信頼関係を失うリスクがあるので、オススメしません。
それぞれ順番に見ていきましょう。
スタッフさんのモチベーションの低下
人件費を削減するために時給を減らすと、働き方は変わらないのにスタッフさんの給料が下がってしまいます。すると、スタッフさんのモチベーションまで下がってしまいます。
モチベーションが下がったスタッフがいると、お店の雰囲気が悪くなるリスクも出てきてしまいます。
弟子「いきなり給料が下がったら、そりゃモチベーションも下がるね」
おかげ丸「なので、安易な人件費のカットは避けた方が良いまる」
また、スタッフさんを安易に解雇してしまうと、既存のスタッフさんも「解雇されるのではないか?」と不安になってしまうので、お店側とスタッフさんの人間関係が悪くなってしまいます。
スタッフさんの一人当たりの業務が増える
人件費を削減して、スタッフの人数を減らすと、スタッフさんの一人当たりの業務が増えます。
そうなると、今までに比べ、仕事をより早く正確にこなさなくてはいけません。
スタッフさんの仕事の負担が増えるので、仕事に対して不満が出てくるかもしれません。
スタッフさんの人材育成に時間が取られる
スタッフさんの仕事量が増えるということは、その仕事量に対応できるスタッフさんを育てる必要があります。
とはいえ、スタッフさんの育成には時間がかかります。
また、人件費を削減すると「せっかく育てたスタッフさんが定着しない」という問題にも繋がるので、注意が必要です。
弟子「スタッフさんに定着してもらいたいなら、人件費は安易に減らさない方が良いね」
おかげ丸「そうだね。それに、安易に人件費を減らすよりも、業務効率を上げることを考えた方が良いまる!」
弟子「え?どうして、いきなり業務効率を上げる話が出てくるの?」
おかげ丸「業務効率を上げれば、少ない人数で、スタッフの負担を極力減らしてお店を運営できるので、結果的に人件費を節約できるまる」
業務効率を上げて結果的に人件費の節約する
業務効率を上げて、人件費の節約する方法を紹介します。この方法なら、スタッフさんとの人間関係は壊れづらいですよ。
- システムを導入して業務効率を上げる
- マニュアルやオペレーションの簡略化で業務効率を上げる
それぞれ順番にお伝えしますね。
システムを導入して業務効率を上げる
スタッフさんの仕事を少しでも少なくするため、食券機やPOSレジ(どの商品がいくつ売れたか管理できるレジ)などのシステムを導入するのがオススメです。
モバイルオーダーやテーブルオーダーなどのセルフオーダーシステムを導入すると、少ない人数でもお店を運営できるので、人件費を節約できますよ。中には、モバイルオーダーを導入したことで人時売上高が40%アップした店舗もあるのだとか。
システムを導入すると、少ない人数でもお店を運営できるので、人件費を節約できますよ。
また、スタッフさんの時給を減らす必要はないので、スタッフさんのモチベーションも下がりませんよ。
弟子「食券機やタブレットで注文できるお店なら、注文をお客様に聞く必要がないから効率的だね」
おかげ丸「システムを活用すれば、少ない人数でもお店を営業できるので結果的に人件費を節約できるまる」
システム導入には機器コストなどの初期費用がかかりますが、導入後に期待できる人件費削減分を考慮して導入するかを検討するとよいでしょう。
マニュアルやオペレーションの簡略化で業務効率を上げる
システムの導入以外でも、仕事の効率化を上げられます。
そのためにできることは、以下の2点です。
- 仕事をマニュアル化する
- オペレーションを改善する
仕事をマニュアル化する
「マニュアルを作るのは、ちょっと面倒」と思うかもしれません。しかし、1回マニュアルを作ると業務効率が上がりますよ。
仕事をマニュアルにまとめておけば、新人のスタッフさんの教育コストを減らせます。
例えば、レジ締めをいつもしてくれているAさんが急にお休みになりました。Aさん以外はレジ締めをしたことがありません。こんなときにマニュアルが用意してあったら、他のスタッフさんでもレジ締められます。
「あの人がいないと仕事が回らない」ということを減らせます。
弟子「マニュアルがあると安心できるね」
おかげ丸「早めに作っておくと、業務がとっても楽になるよ!一度作ってみるのがオススメまる」
オペレーションを改善する
仕事が早くなるように可能な範囲で、オペレーションを改善しておきましょう。
例えば、以下の取り組みをするだけで、業務効率は上がります。
- ナイフやフォークはテーブルにセッティングしておく
- お店はセルフサービスにする
- 掃除がしやすいように物を減らす
- 物の位置を決めておく
- アイドルタイムに仕込みや事務作業を行う
- 3〜4時間の短時間勤務希望のスタッフを増やしてシフトを最適化する
- ホール・厨房の分業制を廃止し、オールラウンダーのスタッフを増やす
おかげ丸「効率化を徹底的に重視した結果、お箸やカラトリはテーブルの下の引き出しに閉まっておいて、お客様に取ってもらうという店舗もあるまるよ」
弟子「アイデア次第でいろんな効率化が図れそうだね」
お店のスタッフで話し合って、「どうすればもっと効率よくできるのか?」を話し合うのもスタッフさんがお店の一員と感じてくれるので、オススメです。現場によく立っているスタッフさんからは、貴重な意見をもらえることもありますよ。
弟子「オペレーションが改善したら、どんどん働きやすくなるね」
おかげ丸「働きやすい職場なら、スタッフさんが定着する良いお店になりやすいまる」
まとめ:人件費の節約は慎重に行いましょう
もう一度、FLコストと人件費の目安をお伝えしておきます。
- 飲食店を経営するうえで重要な指針はFLコスト
- FLコストは売上の55~60%がベスト
- FLコストをしっかり出すことで数字に基づいた経営ができる
- 人件費の目安は20~30%
繰り返しになりますが、人件費を安易に削減してしまうと以下のトラブルが起こるリスクが出てきます。
- スタッフさんのモチベーションの低下
- スタッフさんの1人にかかる仕事が増える
- スタッフさんの人材育成に時間が取られる
なので、安易な人件費の削減ではなく、業務効率化を上げた結果として人件費を節約するのがオススメです。
- システムを導入して業務効率を上げる
- マニュアルやオペレーションの簡略化で業務効率を上げる
人件費は、会計上は経費として扱いますが、お店を一緒に作ってくれるスタッフさんへの投資でもあるので、安易に削減をせずに業務効率を上げて働きやすいお店を作ることを目標にしてみましょう。
実際、繁盛しているお店なら、「時給1,200円」や「時給1,500円」と高い時給を出していることも多いです。繁盛しているお店は業務効率を上げて、少ない人数、短い時間でも運営できるお店を作っているのです。
業務効率を上げておけば、スタッフはきちんとした時給をもらえて、お店側は人件費を抑えられるという人件費の管理方法ができます。
弟子「スタッフさんにきちんとした時給を払えば、その分スタッフさんが気持ちの良い接客をしてくれそうだね」
おかげ丸「そうだね!繰り返しになるけど、人件費を削ることよりも、業務効率を上げて、スタッフさんが働きやすいお店を作ることが繁盛店の人件費のよい管理方法まる~」